今のままでは2030年に基幹業務システムの維持さえままならなくなる!?
ビジネスを支えるITシステムに、今、大きな危機が訪れようとしている。先ごろ経済産業省が発表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートでは、レガシー化した基幹システムのブラックボックス状態を解消できない企業は「デジタル競争の敗者となる」と強く警告。既存システムのお守りにIT予算のほとんどが費やされていることも、デジタル変革を妨げる大きな要因として指摘されている。このままの状況が続けば、2025~2030年にかけて最大12兆円/年の損失が生じるとの試算も。これがいわゆる「2025年の崖」と呼ばれる問題だ。
しかし、実はこうしたレガシー問題は今に始まったことではない。実際に過去には、メインフレーム技術者が大量に不足する「2007年問題」というものもあった。そこから見えてくるのは、
『一度作ったシステムは、いつか必ずレガシー化する』
という事実だ。2025年に向けた備えはもちろん重要だが、従来の発想のままでは、また5年後、10年後に同じ問題に直面することになる。
特に近年では、IT人材不足が深刻な問題となっている。2030年には80万人ものIT技術者が不足すると予想されている。うかうかしていると、受発注などの基幹業務を担う既存システムの維持すら困難になりかねない。
このような経営リスクを回避するには、
『作るから作らないへ、持つから持たざるへ、発想転換を図る』
ことが重要だ。SaaSを活用し、レガシー化する部分を減らしていけば、DXへの投資により比重を移すことができる。ただし、企業活動の中枢を担う基幹システムにSaaS型ERPを適用するには、その影響の大きさ考えると全社を巻き込んだ合意形成や事前確認、見極めが必要だ。以下では、情シス部門がリードしてクリアすべき5つの壁:「経営者の壁」「ユーザーの壁」「業務の壁」「製品の壁」「運用の壁」の具体的な内容とその処方箋について解説していきたい。