製造業であれば、高機能かつ高品質な製品を作る。サービス業であれば、できるだけコストを抑えながらサービスの品質を高める。そうすれば、市場に広く受け入れられ、売り上げや利益も増大する。日本の企業は、こうした考えのもと、長期にわたって成長を続けてきた。
しかし、状況は大きく変わっている。供給が需要を上回ったり、市場がグローバル化したりした結果、多くの業界で製品やサービスそのものの差別化は困難となり、消費者が求める価値も大きく変化してしまっている。
分かりやすいのがスマートフォンだ。ほとんどのスマートフォンは、高性能なプロセッサー、十分な容量のメモリー、高精細なカメラとディスプレイなどを装備しており、スペック上の差を実感することは難しい。それにもかかわらず、淘汰は進み、勝ち組が確実に存在している。
では、現在の消費者は何を求めているのか。それは、ほかにはない「ユーザー体験」だ。商品を所有したときの主観的な満足感や購入後のアフターサービスの便利さなどはもちろん、商品・サービスを選んでいる最中や購入を決定する瞬間といったプロセス全体で、どんな体験ができるのかがより重要になってきているのである。
では、新しいユーザー体験は、どうすれば生み出すことができるのか。そのための企業マインドの養い方とは──。以降では、すかいらーくグループと丸井グループの事例を交えながら、そのための取り組みについて見ていこう。