いかに今後も持続的な成長を遂げていくか。これは多くの日本企業にとって重要なテーマだ。しかし、その大きな足かせになりかねないのが、レガシー化した基幹システムである。企業経営の根幹を担うべき基幹システムが、固定化したビジネスモデルや業務プロセスにしか対応できないようでは、今後の厳しい競争を勝ち抜いていくことは難しい。
とはいえ、これは言葉で表現するほど簡単な話ではない。基幹システムは社内の重要業務と密接に結びついているため、その刷新には相当な時間と手間がかかるのが通例だ。ユーザーへの影響も大きいことから、数年掛かりのプロジェクトになってしまうケースも珍しくない。先々の苦労を考えると、二の足を踏んでしまう企業も多いことだろう。
そうした企業へのヒントになるのが、通信機器/車載機器用コネクタの専業メーカー、本多通信工業の事例である。同社では、先ごろ基幹システムの全面刷新を実施。独SAP社のERPパッケージ「SAP S/4HANA」を採用し、今後の事業運営を支える新たなビジネス基盤を確立した。特に、本プロジェクトで注目されるのが、その内容とスピードである。販売管理、在庫購買管理、生産管理、財務会計、管理会計といった主要業務をすべて網羅するビッグバン型導入でありながら、サービスインまでに要した期間はわずか約10カ月。しかも、ERP導入でありがちなアドオン機能を徹底的に廃する「アドオン・ゼロ」にまで挑戦している。同社では一体、どのようにして、本プロジェクトを成し遂げたのだろうか。